メキシコへの手紙 パート4 〜生活文化編〜
メキシコへの手紙 第3弾
〜La Santa muerte “死神信仰”とメキシコ庶民の宗教観〜
メキシコはカトリックの国だといわれるほど、国民の9割以上がカトリック信仰だといわれる。一方でそれはバチカンのカトリック信仰とは似ても似つかわないものである。
なぜならメキシコのカトリックは先住民にもともと存在した土着信仰との融合した宗教だといわれる為である。メキシコでいうカトリックとは偶像崇拝、つまりグアダルーペ聖母に代表される聖人信仰も同時に深く定着している。余談であるが、“San Judas”(フーダス聖人)は、”不可能を可能にする”聖人だと言われ、グアダルーペ聖人の次にメキシコ国内で"人気の高い”聖人だと言われる。彼の生まれた10月28日、毎月28日にはご利益にあやかりたいとの教会には訪れる信仰者で溢れかえる。(この教会はメキシコシティ内の地下鉄イダルゴ駅すぐ近くに位置する。)
余談はこれくらいにして、”死神"信仰が存在することラジオ番組を持つカルロスさんから聞きつけ、“死神”の祭壇を所有する女性へのインタビューに同行させてもらうことにした。
その祭壇とは“TEPITO”(テピート)というメキシコ人でもなかなか近づかない危険地域であり、外国人が歩くと強盗などの何かしらの被害に会うのは当たり前だといわれる。
海賊版のDVD,CD、(まだ公開して間もない映画も海賊版DVDになって路上にすぐ並ぶ)車の部品、野菜、果物、古着からブランド品の服などいわゆる日常雑貨がすべて出揃い、”安いものから高い“ものまで路上の屋台や道端に置かれたブルーシートの上に所狭しと並ぶ。戦後日本の”闇市”を思い起こさせる場所ではないだろうか。このテピートの“青空市場”では数百万ペソのお金動くと言われている。ものすごい経済効果!
そんな場所にある“死神”祭壇、死神信仰についてのインタビューが目的でこの地域を訪れた。
今回まず、テピートに住むいろんな人々を取り上げた“Tepito Barrio Bravo”(テピートはすてきな地域)写真展に入る。19歳のボクサーから47歳のヒッピーの女性、全身タトゥーをしてキリストを深く信仰しているお兄さん、ゲイのカップル(最近、ゲイの結婚を議会で可決したばかりである。それくらいカミングアウトしている人が多いということだろうか?)そして、黄色、赤、青と所狭しとカラフルな屋根が隙間なく続いているテピートの市場を上空から撮影した写真などメキシコの庶民を垣間見られたとても興味深い写真展になった。
そしてこの写真展の一人のモデルにもなっていた“死神”の祭壇の持ち主、エンリケ・ロメロ・ロメロさんと展示会場で落ち合う(以下、エンリケおばちゃん)。祭壇は、テピートではなくモレロス地域にあるという、市場を通り、団地を通り、バスターミナルを越えという迷路のような道を10分ほど歩いて、辿り着いた。その祭壇のある場所は決してお世辞にもきれいとも大きいとはいえない住宅地の中にひっそりたたずんでいる。しかし、祭壇の前にはろうそく、ビール、お菓子、そして祭壇の前の道路には花束が埋め尽くされており、死神、いや、ニーニャ(かわいい女の子の意味)信仰されていることが人目でわかった。この死神はニーニャまたは、ノビア:彼女の意味と呼ばれている。つまり死神は女性らしい。
メキシコシティの中でもこのような祭壇が700もあるそうである。儀式、お祭りは毎年1日、そして10月31日になるとグアダラハラ、トルーカ、イダルゴなどメキシコ国内から基より、フランスはパリ、ドイツ、NYとところ世界中からこの信仰に興味を持つ人類学者、社会学者が訪れる。
ドイツ人が死神を全身タトゥーにしている、写真を見せてくれて、『本当に“彼女”の信仰者だと思うの。片言のスペイン語で「ぼ く た ち は、 あ な た の む す こ で す。」と言ってくれたのよ。』
この“死神信仰”の起源を訪ねると、もともとはアステカ時代からの起源、メキシコ人にとって“死”という概念が元になっているという回答が得られた。
「彼女(死神)は神からの送られて来たのよ。」
「悪魔の死者だの、私自身も悪魔の死者などと当初はマスコミに騒がれたものだわ、でも今はたくさんの人々がお菓子や飲み物を祭壇にお供えするという人が増えて、そんな風にさわがれなくなったわ。」
エンリケさんが祭壇をお祭りしたきっかけは、8歳のときから当時、叔母さんから影響を受け、死神を信仰するようになったらしい。そのときは今のようで像はなく、紙で作られた死神の紙が信仰のものだったらしい。『ある日、仕事から帰宅した時、彼女が私を部屋いっぱいの花束と一緒に迎えてくらたの。』
エンリケおばちゃんのコメントを続けたい。
『私はニーニャを信仰しているわ、カトリック信仰者でもあるの、でも、日曜日のミサは私には症に合わないわ、だってずっと長い時間座ってお布施を聞いているなんて耐えられない。私はいつも一人で教会に行って、キリストに「いつも家族をお守りくださいましてありがとうございます。」とお礼と言ってそれからグアダルーペ聖母にお祈りに行くの。』
『カトリック信仰とニーニャへの信仰は相反するものではないと思っているわ。カトリック教会はどう思っているかわからいないけれど。』
『何よりも信仰が勝るのよ。』
『ゲイの子達は本当に熱心に信仰しているわ。本当にいい男の子たちなの、格好は女の子だけどね。だれでも何かを信じたい、すがりたいものなのよ。』
メキシコの一番指示されているラジオ局MONITOR の生活文化担当のベロニカさんが、娼婦、麻薬密売人(ナルコトラフィコ)人々の信仰が厚いことを訪ねると、
『彼女〈娼婦〉たちは本当に傷ついているのよ。ナルコトラフィコの人金持ち、貧乏人、若者、お年寄り、誰もがこの世界にmision(役割)を与えられて生まれてきたのだもの。彼女を信仰する人ならどんな人でも彼女は受け入れるわ。』
衣装の話に映ると、一度も同じものを着たことがない。
『彼女の信仰者がいつでも違う衣装を持ってきてくれるのよ、だから一度も同じ衣装を着ていることはないわ。』
『毎月1日には昼の12時からマリアッチ、ノルテーニョ〈メキシコ北部の音楽〉、マリンバ(メキシコ南部チアパス州に代表される音楽)で祭壇の前にはいっぱいになるの。信仰する人々がニーニャに感謝の気持ちを捧げるために呼んでくるのよ。私一人じゃ、どんなにお金があっても足りないわ。本当に炊たくさんの人がこの豪華とはいえない祭壇を訪れるのよ。』
もう一人のラジオのDJのカルロスさんの質問、
「彼女のロサリオを買った友達がいるんですが、それを無くしてしまったのです、その人曰く、それは彼女(死神)に見放されたということを意味するんでしょうか?」
『それはその人それぞれの考え方の違いだと思うの、私がロサリオを無くしてしまったとき、何か悪いことが起こる暗示を彼女〈死神〉が知らせてくれるの、こけて怪我をするだとか、病気にかかるだとか。要は考え方の違いだと思うわ。』
祭壇の隣にある売店では、ろうそく、それぞれに色によって意味する死神のミニチュアが飾られていた。知らずに触ってしまった私にエンリケさんのだんなさんは「全て(ニーニャ)が乗っているから触らないでね。」
この日、ニーニャを訪れていた主に若者にインタビューをした、週に一回訪れるなど本当に庶民の信仰されていることを知る。お昼間にも関わらず、モタ(マリファナ)、シンナー、ロケット花火が上げれるなど体の感覚で一人で行けるような地域ではない。
最後に、“死神信仰”と聞くと偏った考えを持つ人々の信仰だという勝手に想像していたが、エンリケおばさんのはなしを聞いたり、よく見ると本当に愛らしい顔をしている。
本当に若者から大人、女性、男性と分け隔てなく信仰されていることを感じた。今度は今月末に行われる祭壇のお祝いに訪れたい。そんな風に思った。
テピートの町並み?

テピートの市場を上空から見ると?

写真展の写真1

写真展の写真2ちなみにこのピエロさんは47歳

写真展の写真3 19才のボクサーとその彼女〈17歳〉

写真展の写真5

写真展の写真 ?待ってました!エンリケおばちゃんとニーニャ〈死神〉&祭壇の入り口に刻まれてるシンボル

祭壇の周りのたくさんの花束

ニーニャとお祈りをする人々〈絶え間なく人が訪れていた〉


インタヴューに応じてくれた若者たち、自分からニーニャのタトゥーを見せてくれた〈快く答えてくれた〉

10月31日に行われたお祭りを知らせる横断幕

祭壇の近くにある祭壇の住所を知らせる看板とニーニャの絵(はっきりいって怖かった)